ミニPCをモバイルバッテリーからのUSB PD給電で使ってみた (自作移動ロボット用)

はじめに

 最近、図1に示す移動ロボットを自作して遊んでいます。UbuntuとROS 2の環境をミニPC上に構築し、LiDARやオドメトリ情報を入力してごにょごにょしてます。

 ミニPCへの電力供給源としてモバイルバッテリーを使ってみた結果、問題なく使えたかどうかお伝えします。移動ロボットを自作する方の参考になれば幸いです。(同様の構成を試して動かなくても責任は取らないです)

 

図1 自作移動ロボット

 

使用するPC

 minisforumのUN305Cを使用しています。スペックは下記です。ちなみにもう廃版のようです。図2に、UN305CのUSB Type-Cポートを示します。このポートは、USB PD給電を受けることができます。

 i3-N305は、ミニPCに最近よく使われているN100の上位っぽい製品です。i3と名前がついていますが、PコアはなくEコアのみ8個の構成です。消費電力が低く、なおかつそこそこ使えそうなので選びました。

 

CPU:intel i3-N305(8コア8スレッド)

GPU:内臓GPUのみ

RAM:16 GB

SSD:256 GB

OS:購入時のWindows11を削除し、Ubuntu 22.04 LTSをインストールし使用

 

Ubuntu 22.04 LTSのインストール時、グラフィックドライバ周りのトラブルがあり、解決に時間を要しました。現在も、2つあるHDMIポートのうち片方が使えません。このPCにLinuxを入れるのはおすすめできません。
(公式非対応なのでMinisforumが悪いわけではありません)

 

図2 UN305CのUSB Type-C ポート

 

 なお、必要なUSB PD給電の出力は、ホームページに明記がありませんでした。参考として、付属のACアダプター出力は36 W(12 V、3 A)です。なお、最大33 W出力が可能なUSB PD充電器であるAnker 323 Chargerを使用すると、起動はできるものの高負荷時には落ちることがありました。

 カスタマーサポートに質問したところ、通常ならば65 W以上の出力が可能なUSB PD給電を用いると問題なく使えるとの返答がありました。

 

使用するモバイルバッテリー

 カスタマーサポートへの問い合わせ結果を受けて、65 W出力が可能なモバイルバッテリーであるAnker 537 Power Bankを選びました。大きいですが自作移動ロボットに入るサイズなのでヨシ👈

 

サイズ:約160 x 85 x 27 mm

出力:USB Type-C 単ポート使用時に最大65 W

容量:24000 mAh

 

使用テスト

テスト① 起動テスト

 まずは、最低限起動できることを確認しました。

 事前にUbuntu上の電源モードをバランスに設定してシャットダウンし、ACアダプタのケーブルを抜いてモバイルバッテリーを接続しました。電源ボタンを押したところ、正常に起動しました。

テスト② 高負荷テスト

 次に、高負荷時に落ちないことを確認しました。Ubuntu上の電源モードをパフォーマンスに設定した上で、Terminal上で下記のコマンドを打ち、8コア中6コアのCPU使用率が100 %となるように負荷 をかけました。その結果、落ちることなく正常に動作し続けました。

 stress -c 6 

 

テスト③ 使用可能時間テスト

 最後に、何時間程度使用できるかを確認しました。Ubuntu上の電源モードをバランスに設定した上で、ミニPCに自作基板およびLiDARを接続しました。

※自作基板は、車輪の回転数制御、mems 9軸センサ値の読み取り等を行い、消費電力は1 W未満。LiDARは消費電力2 W程度。

 また、自作基板とLiDARそれぞれを制御するROS2 ノードを起動しました。このとき、CPU使用率は全コアが50 %程度でした。満充電状態のモバイルバッテリーを接続し、残量インジケータが3/4になるまでに、約3.5時間かかりました。

※残量が4つのLEDで表示されるので、バッテリー切れのぎりぎりまで使用することはできない。ぎりぎりを攻めたいなら、残量が液晶に数値で表示される機種を買おう。

 

 リチウムイオン電池の電圧を3.7 V、放電時の電力変換効率を80 %としたとき、今回のモバイルバッテリーの利用可能な電力量は約71 Whです。3.5時間でその3/4を消費したと仮定すると、平均消費電力は約15 Wであり、自作基板とLiDAR消費分を引くと、約12 Wです。

 intel i3-N305のTDPは15 Wであること、CPU使用率は約50 %であったこと、CPU以外にもRAM、SSD、冷却FAN等が電力を消費することを考えると、計算は合いますね。

 

おわりに

 今回は、自作移動ロボット用に買ったミニPCを、モバイルバッテリーからのUSB PD給電で動かしてみました。結果として無事に動き、CPU使用率50 %程度ならば3.5時間使用できました。

 みんなもミニPCを使ってロボットをつくろう! いや、Jetsonかラズパイでよくね